2017年8月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

著者名索引

香桑の近況

  • 2017.1.4
    2016年 合計50冊
    2015年 合計32冊
    2014年 合計26冊
    2013年 合計32冊
    2012年 合計54冊
    2011年 合計63冊
    2010年 合計59冊
    2009年 合計71冊

    合計323冊
無料ブログはココログ

« パイド・パイパー:自由への越境 | トップページ | 腐女子彼女。 »

2007.04.12

新釈 走れメロス 他四編

新釈 走れメロス 他四篇 森見登美彦 2007 祥伝社

あ、またパンツ。
色合いも字体もレトロな装丁の表紙の中央に輝くピンクのブリーフ。
ページを開いてみても、字間や行間、文字そのものもどことなく古風で、堅苦しくも真面目な本なのかと思いきや、ピンクのブリーフ。
中島敦『山月記』、芥川龍之介『藪の中』、太宰治『走れメロス』、坂口安吾『桜の森の満開の下』、森鴎外『百物語』を、京都を舞台に森見流にリライトしたもので、表紙にはそれぞれの小説の題の上にイラストが描かれている。
パンツは、著者が書いていて一番楽しかったという『走れメロス』のアイコンだ。
パンツ番長に続き、パンツが好きだなあ…。

『夜は短し歩けよ乙女』を読んで楽しんだ人にお勧めする。
短編はすべて同じ仮想京都を舞台とするからだ。だるまが転がり、天狗が酔っ払い、きつねや狸が神様がいる、あの京都。
詭弁論部があり、パンツ番長戦があり、図書館警察があり、単位取得と桃色遊戯にあまり熟達していない男たちが力いっぱい阿呆をやりぬく、あの大学の、あの文化祭を思い出そう。
短編集であるため物足りない感じもする。が、短編ごとにがらりと雰囲気を変えて見せた上で、登場人物が次の章のどこかに出てくるようなオムニバスになっている。
中島や芥川らの設定や文体というより、雰囲気をもっともよく再現して、再構築しているように思った。

確かに、『走れメロス』は面白かった。
もう。ばかばかしいんだけど、いい。どこかねじれた論理に言いくるめられて飲み込まれて、突っ走れ。
桂駅が出てきただけで私の興奮は最高潮。いやいや、河原町から烏丸への四条の地下道を疾走する箇所も懐かしい。嵐山の辺りは、何度も行った場所だけに思いいれもひとしお。目に蘇る景色の一つ一つがいとおしい。
この脱ぎっぷりには、某小説の影響で、レナウン娘が聞こえてきそうになった。メロディが美しき青きドナウであっても、どことなくやけっぱちな感じが漂うのもよい。
笑うしかない。

最初の『山月記』も、好きだなあ。もとの小説も秀逸なんだけれども、この『山月記』も印象深い。ばかばかしいところが、物悲しく憐れである。
この後、飛び去った彼はどうなったんだろう。樋口さんに弟子入りできたら、祗園に飲みに行くこともできるようになるのかなあ。

『藪の中』『百物語』は共に、原作の書き方を再現しており、どちらかといえば淡々とした短編。
私は、テンションの高いほうが好き。短編の雰囲気に合わせて、自分のテンションも下がった感じ。
前者は、やはり悲しみが透ける。一つの出来事の中でも、人によって見方や捉え方、語り方が変わる。そこから染み出る人となり。人は見たいように見る、見たいものしか見ないという、人のありようの悲しみ。
後者は、宴会の空騒ぎ。そこに体はあるけれども心が一体になれぬ人の孤独感が妙。この孤独感は、しかし、この本の全体に共通して登場人物の誰かが感じているものでもある。

『桜の森の満開の下』は。
南禅寺から銀閣寺までの哲学の道から蹴上インクラインの桜並木。
そこに花見に連れて行ってもらった、自分の思い出があるために、私の切なさも最高潮になった。
かつて、そこに一緒にいた。私の人生の持ち時間の中でも、ほんの一瞬であるかもしれないが。
写真も振り返る気にならない、彼と歩いた景色が思い出されて、ほろ苦かった。息が苦しくて、胸が痛くて、久しぶりに過呼吸になりかかったほどである。
ゆえに、語るのは避けよう。私はあの満開の桜の下に、何を埋めてきたのか。
私の記憶が正しければ、その景色の中に、作中に何度も登場する、かの鉄筋コンクリートのアパートがあった気がする?

この小説の中で、京都の四季が出てくる。折々のお祭りも出てくる。
葵祭りが出てくれば、京都青竜会がアルバイトをしているんじゃないかと思い。
祇園祭の宵山では、四つの大学から、四色の揃いの浴衣を着た学生が顔見世をしているように感じ。
鴨川デルタと見るだけで、「ホルモー!」と叫び声が聞こえてくる心地。
あっちこっちで、万城目学『鴨川ホルモー』の登場人物とニアミスしそうな地名と行事。
私の頭の中では、二人の作者の世界が渾然一体となってしまったようです。

もう少し積読本を消化したら、森見さんのほかの本も集めてみよう、と。

 ***

蛇足であるが。「藪の中」の注で「多用な読み」とあったが、「多様な読み」の間違いではないか、気になった。

 ***

TBのかわりに……

水無月・Rさんのブログ 『蒼のほとりで書に溺れ。』 『【新釈】走れメロス 他四篇』/森見登美彦 ◎
森見登美彦さんが、京都を舞台に日本近代文学を翻案?!そこに描かれるのは「腐れ大学生」なのか。「魑魅魍魎」なのか?!

« パイド・パイパー:自由への越境 | トップページ | 腐女子彼女。 »

# 京都界隈」カテゴリの記事

小説(日本)」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。
トラバ、コメントありがとうございます。
すごく濃い感想、読み応えがありました。
あのイラストはアイコンだったのですね(笑)。
『山月記』、樋口さんへの弟子入りに驚いたり、
『桜の森の満開の下』、切なさが伝わってきました。
京都をご存知なので、『走れメロス』も臨場感いっぱいだったのですね~。

唐突ですが、来週から『図書館シリーズ』アップの予定です。
こちらからのが反映されにくいみたいなので、
よろしかったら、トラバ、コメント寄せていただけるとうれしいです。

藍色さん、TB&コメント、ありがとうございます。ちゃんと届いていました。図書館シリーズのレビューも楽しみにしています。

京都は桜の名所が多くて、哲学の道の辺りはとても綺麗でしたよー。人通りも多く、にぎやかでした。
大学の多い学生の町であるので、大学ごと部活ごとに伝統や伝説も多くあった気がします。
人目のあるところで書いちゃまずそうなぐらいに。笑

香桑さん
こんばんは~♪
そういえば、またパンツだ(笑)!
本書には関係ないんだけど、鴨川ホルモー未読なんですよね。読まなきゃなぁ。。。万城目学さんの新刊、奈良が舞台なのでこっちも楽しみなんですけどねー。結局万城目さん自体が未読・・・。
京都が舞台だと、なんだかそれだけで盛り上がりますね★

やぎっちょさん、TB&コメント、ありがとうございます。
知っている場所が出てくるって嬉しいものですね。変に興奮してアヤシイ人になります。
私は、これから「太陽の塔」と「きつねのはなし」と「鹿男あをによし」を注文します。
続々と目の前に本が積みあがっていきまする。
鴨川ホルモーも面白かったですよー。パンツすら残らなくなりますから、どっちが破廉恥で猥褻かは、やぎっちょさんの判断にお任せします。

走れメロスが面白すぎて、他の作品がかすんでしまったような感があるんだよなぁ・・・。
ということで、乙女以上に辛口な感想になってしまいました;;;
そんなののTBなんて送っていいのかしら・・・^^;;;
と、悩みつつ。。。

香桑さん、こんばんは(^^)。
メロスならぬ芽野が京都を疾走し、逃げまくる。詭弁が撒き散らされ、桃色ブリーフが舞い狂う。
モリミーワールドが炸裂してましたね。
表題の「走れメロス」が一番でしたが、「山月記」屋「百物語」もよかったです。

水無月・Rさん、こんばんは。
この本ぐらいですね。ブリーフを連呼したレビューを書いたのは。しかも、検索ワードでひっかかる……。
もりみーのしっとりした文章の世界も味わいがありますね。
TBの代わりに、直リンをはらせていただきました。差支えがあれば、お申し付けくださいませ。

>すずなちゃん
コメントのお返事をつけていないことにいまさら気付きました。すみませんです。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/183237/6074461

この記事へのトラックバック一覧です: 新釈 走れメロス 他四編:

» 新釈走れメロス他四篇 森見登美彦 [粋な提案]
装幀はchutte。装画は山本祐布子。「小説NON」2005年10月号から2007年3月号まで不定期掲載をまとめた短編集。 ・山月記・原作中島敦(既読) 孤高の大学生、斎藤秀太郎が大文字山で変化(へんげ)したのは…。抑えた... [続きを読む]

» 【新訳】走れメロス 森見登美彦 ["やぎっちょ"のベストブックde幸せ読書!!]
新釈 走れメロス 他四篇 ■やぎっちょ書評 森見登美彦さんの月。で、発送が一番早かった、そして最近出版されたこの本を読んでみる。正直文学は大の苦手だが果たしてだいじょうぶか!? 「走れメロス」他4編の短編から成ってますが、個人的には「走れメロス」が飛びぬけて...... [続きを読む]

» 【新釈】走れメロス 他四篇(森見登美彦) [Bookworm]
うーむ。うむうむ。うむむむむ。 ぶっちゃけるとですね。この作品を最初に読んでいたら、この著者の他の作品には手が出なかったかもしれない・・・なぁ、と、読み終わって最初に思いましたです。... [続きを読む]

» 【新釈】走れメロス 他四篇 〔森見登美彦〕 [まったり読書日記]
新釈 走れメロス 他四篇森見 登美彦 祥伝社 2007-03-13売り上げランキング : 1947おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools ≪内容≫ あの名作が、京の都に甦る!? 異様なテンションで突っ走る表題作をはじめ、先達への敬意が切なさと笑いをさそう、5つの傑作短編....... [続きを読む]

« パイド・パイパー:自由への越境 | トップページ | 腐女子彼女。 »

Here is something you can do.

  • ボランティア・寄付ならプラン・ジャパン
    子どもとともに途上国の地域開発を進める国際NGO

最近のトラックバック