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2007.03.29

占領下パリの思想家たち:収容所と亡命の時代

占領下パリの思想家たち―収容所と亡命の時代 桜井哲夫 2007 平凡社新書

フランスの現代思想に興味を持つ人はもちろんのこと、社会における知識人の役割を考える人、戦争や政治について語る人に、一読を勧めたい。
そのとき、何ができるのか。どう振る舞うべきか。
いや、そもそも、そのときを惹き起こしてはならないと深く戒めるために。

やっと読み終わったー。長かった。厚かった。中身が詰っていた。
古い時代の雑学っぽい文化史や生活史は好きだが戦争史は嫌いな上、気ままな自分の興味のあるところしか教えない歴史の先生にばかり教わってきた所為か、私の近代史から現代史の知識は薄い。
怒涛の歴史には圧倒される。数々の地名と人名に、右往左往しながら、ともかくも最後まで読んでみようと思った。
ここで登場する主な知識人には、サルトル、デリダ、コクトー、ボーヴォワール、レヴィ=ストロース、サン=テグジュペリ、アーレント、デュラス、カミュ、メルロ=ポンティ、ベンヤミンなどなど。

フランスの現代思想と言われるものは小難しそうなイメージが先行して、学生時代は手を出さないように自制し、なるべく避けて回っていた。
それが、内田樹『ためらいの倫理学』をきっかけに、サルトルの『嘔吐』を読んだ後、中山元『フーコー入門』、永井均『ウィトゲンシュタイン入門』、熊野純彦『レヴィナス入門』と重ねたところに、この本を紹介された。
個々の哲学者の背景にあったものが、この本を読むことで、時系列がすっきりと整理され、生々しく肉付けされたように思う。
『茶色の朝』の日々、戦争の世紀の、その只中で生きていたということ。

フーコーは、戦後のフランスは、ハイデガーを乗り越えなくてはならないという使命を帯びていたわけ。
レヴィナスは、ユダヤ人であり、不条理な世界の、無用に過酷な苦しみに対し、私は無垢でありうるのかと問い続けたわけ。
情報量が多すぎて、なんとも感想が難しい。
が、とりあえず、サルトルはやっぱり変な人と思った。あんまり友達になりたくないタイプだなあ。
著者は後書きで中井久夫(『関与と観察』@積読中)を引きつつ、人類がいまだ戦争という宿痾から逃れていないことを指摘し、ベンヤミンから引きつつ、「『物』を媒介にして、相手の嘘に対しても報復行為を行わず、時間をかけて話し合いを続け、相互理解の道をさぐるという、平凡だがきわめて難しい道を歩むほかは、今後われわれが生き残る道はない」(p.299)と述べる。
歴史は、その平凡で当たり前のことを記銘・想起し続けるためにこそ、忘却してはならないと思った。

ちくま新書がお気に入りの最近、次に読む思想関係は、さしあたって船木亨『メルロ=ポンティ入門』、小田亮『レヴィ=ストロース入門』の予定。いよいよ、デリダ、ラカン、バタイユを避けきれなくなりつつある気がする。新書ぐらいで手頃な本があるといいんだけどな。

最後に孫引きになるが、メルロ=ポンティの文章を引いておこうと思う。三崎亜記の『となり町戦争』の主題は、まさにこのことであると思った。これは、日本という土地にいる人においても、また他の国の何かの戦争の時代を生きた人にとっても、共通することではなかろうか。今現在、どこかに戦争がある限り、誰も無関係ではありえない。

 ***

 われわれは、無実ではないし、自分たちが置かれていた状況の中では、非難されないですまされる行為というものはなかったというのは本当である。この地に留まることでわれわれはなんらかの程度、すべて共犯者となったのだ。(中略)武器あるいは宣伝活動で戦争を続けるためにフランスを去った人々も、自分の手が汚れていないと誇ることはできない。というのも、彼らがあらゆる直接的な妥協を免れていたとしても、一時的にこの土地から離脱していたからで、その意味では、われわれと同じく、彼らにも占領による荒廃への責任があることになるからだ。(p.278)

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