鴨川ホルモー
表紙を見ただけでも、うふふと笑ってしまう。
京都在住経験者には、一目で知れることだろう。
十人の大学生が集まって挑む、大学対抗の競技。
同じ十人の大学生なのに、三浦しをん『風が強く吹いている』とは大違いで、箱根駅伝ではない。
対戦するは、京大青竜会、京産大玄武組、立命館白虎隊、龍大フェニックスの4チーム。野球でもなければ、ラグビーでもない。
さて、ホルモーとはなんぞや?
葵祭のバイトに始まり、祇園祭を経て、気づけば吉田神社で奉納舞。
出てくる地名の一つ一つが懐かしい。今出川に百万遍、丸太町通に四条烏丸、河原町。京阪三条、岩倉、衣笠。舞台は、微妙に東よりで北のほうに集中する。
西院の自動車教習所って、あそこっすか?
同志社は鬼を扱うには向かないんですかね。むしろ、人が鬼? しくしく。
京大生に橙色のリュックサックはデフォルトなのか? いや、友人はオレンジ色が好きだったが。確かに持っていたけれども、しかし。
自然、独り言も増えた。
この本も楽しむには、やはり、京都を知っているほうが有利だ。
京都で大学生活を送ったり、京都の大学生の生活を知っている人なら、尚よい。
森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』と同じく、標準語で描かれているが、京大出身者による、京大生を主人公とする物語だから、だ。
そして、片思いに舞い上がり揺れ落ちる男心模様を描くところも、この二冊は印象が重なり合う。
ホルモーがなにゆえ始まり、続くのか?
競技者達は考えずにはいられないけれども、それはそういうものなのだ。
物語にも余計な説明はない。その作者の潔さがよい。
登場人物たちは、謎を解くわけでもなく、その呪いにも似た伝統を解体するのでもなく、巻き込まれ、走り回り、戦い抜き、そして歴史は繰り返される。
安部が主人公なら、芦屋とは仲が悪い。それは、そういうものなのだ。
わからなくても、わからないままに、続いていくもの。物語の全体が、一つのお祭りのように織り成される。
祭りとはそういうものなのだ。続けることは、正しい身振りだ。祀ることは祟りを避けるために始まるのだから。
京都なら、魑魅魍魎が歩き回っていようと、それはそれで許されるかもしれない。
京都大学なら、青竜会やら詭弁論部やらがあって……いいのか? いいのかもしれない。思い描いてみると、楽しいではないか。
奇想天外な設定に、妙に説得力のある大学生活と繊細な男心の描写とあいまって、妙な迫力があり、一気に読まずにいられない。
学生気分を思い起こし、ひとしきり笑いながら楽しんだ末、読後に颯爽と香るは、春の青々しい楠の匂い。
最後に、後書きで目を丸くした。これだから、学生って。
***
続編 → ホルモー六景
***
TBのかわりに……
苗坊さんのブログ『苗坊の読書日記』 鴨川ホルモー 万城目学
このごろ都にはやるもの、勧誘、貧乏、一目ぼれ。
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コメント
あ~~これ!
ちょっと前から「読みたいリスト」に上がってるんだよなぁ。。。
なかなか遭遇出来ずにいたら・・・。
・・・京都にあんまり馴染みがなくても大丈夫かしらーん^^;
投稿: すずな | 2007.03.10 16:28
面白かったですよ! 『夜は短し~』より文体の癖がなくて、読みやすいと思いますよ。
鴨川と夜は短しとNHK!をあわせて、繊細な男心のじたばた三部作としたいぐらい。
関西弁が一切出てこないので、リアル京都ではなく、京都というファンタジーの世界と思って読むことが可能だと思います。
ミステリと違って、地名や位置関係はあんまり重要じゃないです。
投稿: 香桑@室長 | 2007.03.11 01:19
これ面白かったぁ~。
ぶはぶは笑いながら読みました。
・・・茶巾絞りを見る度にニマニマしそう(笑)
投稿: すずな | 2007.03.26 09:41
えへへ。楽しんでもらえて嬉しいです。
私、この本、好きなんだ。
読んでいて、かなりテンションが高くなりました。
奉納舞の伝説は、なんか聞き憶えがあるような気がするのです。
これぐらいのことは、ほんとにやるやろなー。
投稿: 香桑@室長 | 2007.03.27 00:36
TBさせていただきました。
「鹿男、あをによし」に続いて、
「鴨川ホルモー」読了しました。
こっちのほうが好き。
京都にすんだことがなくても面白かった。
安倍晴明について書かれた本、中学のころに、
読んだことがあったので、五行説もすんなり読むことができました。
映像化したら面白いんだろうなぁっと思いましたが、代替わりの儀の時点で、アウトな気がして、また笑ってしまった。おもいだしてw
投稿: kiruhamzd | 2007.11.13 17:03
kiruhamzdさん、TB&コメントありがとうございます。
映像化だなんて、大胆な!笑 吉田神社のシーンはまずいでしょー。とっても楽しそうですが。
今月末に角川から『ホルモー六景』という続編短編集が出るそうですよ。
投稿: 香桑@室長 | 2007.11.13 17:11
コメントありがとうございます。
ブログが本来の目的からそれてきたので、読書のカテゴリーは違うブログに移行しようとしています。メインブログは音楽関係のブログだけのこすつもりです。
今後ともよろしくお願いします。
メインブログよりタブメニューをつかってまたきてくださいね。
投稿: kiruhamzd | 2008.02.24 00:26
こんにちは。TBさせていただきました。
1度挫折してしまったのですが、今回は楽しめましたね。
文章に最初入り込むのに時間がかかったのですが、後半はもうどんどん引き込まれましたね。
万城目さんの恋愛模様が取ってもかわいらしくってすきです。
雰囲気が森見さんの作品に似てるなって思ったのは、私だけではなかったのですね。
京都が舞台だからですかね、やっぱり。
今度は続編を読みます^^
投稿: 苗坊 | 2008.05.10 16:05
苗坊さん、こんばんは。
私は森見作品と万城目作品を同時期にまとめて読んだので、余計に仮想京都の妄想が膨らみあがりました。笑
読みにくさに関しては、デビュー作だけあって、全体がもっと洗練される余地はあるのかもしれませんね。が、私はむしろ『鹿男』を読んだときに、2冊目でこの完成度か!と驚いてしまいました。
万城目は美人がもてるのではなく、個性的な女性を可愛く見せていくところに、作家の技量を用いたいのだそうです。凡ちゃんが可愛くてよかったですね。
投稿: 香桑@室長 | 2008.05.10 21:50