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2007.01.26

家守綺譚

家守綺譚 梨木香歩 2006 新潮文庫

疎水の近く、山の手の住宅地。山を越えれば湖。
関西弁は一切出てこないが、舞台は京都東山辺り。
舞台と言語のズレが、異世界めいた味わいを増す。

当たり前のように掛け軸の鷺が庭の池に出て鮎を狙い、その池には人魚や河童が訪ねる。
百日紅は家守に懸想し、家守は死んだはずの家主と言葉を交わす。
狸が恩返しをし、小鬼が見回る。死者の声がさざめき、神々が裳裾を閃かせる。
その家は、彼岸と此岸の交わる場所、過去と未来の重なる仮屋。
平気で矛盾を背負い込む健康な衆生ではないものの、避難場所。

どこか自然に、不思議な者達が息づいていた景色。
かすかに懐かしく、驚きに満ちた生活。
物語の筋を追うよりも、日記を読むように、世界の空気を味わう。
美しく優しい、静かで穏やか。寛容さ、泰然さ。

その世界には、危機感や喪失感が潜んでいる。
大事なものが近い未来に失われることを惜しむ。が、嘆き、恨み、憎むのではない。
滅びの予感は雨のようにしっとりと降り注ぎ、やがて滋養となるのだ。

また、梨木作品らしく、庭を愛する人、木々を愛する人には、格段の喜びがあろう。
『裏庭』の頃よりも一層、文章も物語りも洗練された感があった。

坂本の日吉神社から、叡山を越えて吉野へ行く道の懐かしさ。
疎水べりの桜を愛でながらそぞろ歩いた思い出も、胸苦しい。
心の奥深いところにしまった景色を彷彿とさせる小説だった。

この本は是非とも、『村田エフェンディ滞土録』とあわせて読んでいただきたい。
ほかでは、わかつきめぐみの『ご近所の博物誌』『ソコツネ・ポルカ』のような世界、管浩江の『末枯れの花守』や中勘助の『鳥の物語』、あるいは、夏目漱石の『夢十夜』あたりを連想した。
あわせて、どうだろうか。

それにしてもわからなかったのは、河童の皿の使い道である。
井戸のつまりを直すのによいとは、これがフィルターになるのか、浄化作用があるのか……。
誰か、ご存知の人は教えてください。

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コメント

香桑さん、こんばんは(^^)。
妖気溢るる高堂家、そこに暮らす脂気の抜けた仙人のごとき様相(でもまだ悟りの境地には至らず?)の征四郎やゴローたち。
植物に絡めて、穏やかで美しい文章で描かれる、幻想的な世界。
こういう作品、大好きです~。

水無月・Rさん、どうも!
こんな風に季節を味わいながら生活することに憧れます。
彼方の国へと続くとば口を身近に体感しつつ、隣のおばさんのような安定することはできずに、ゆらゆらしながら。
河童のお皿のことを書いたためか、浄化槽についてのTBがついてしまったことが面白くて、そのままにしています。

こんにちわ。susuと申します。
ご訪問、ありがとうございました。
しっとりと、滅びの予感・・漂ってましたねぇ。
なのに、警戒心や悲壮感みたいなものがまるでなくて、
そんなところも無性に愛しかったです。

いっしょにご紹介して下さった本の中では
わかつきめぐみ さん、中勘助 さん、未読です。
「末枯れの花守り」はかなり以前に読みましたが、
不思議と記憶に残っているお話だなぁ~と、今気づきました。

susuさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
わかつきめぐみさんは、マンガ家さんですが、ほんわかした独特な持ち味が心地よいのです。
記事の中には挙げていませんが、森見登美彦『有頂天家族』は、『家守綺譚』の100年後のように思われて楽しいです。

ブログのほうが長文ヴァージョンで、密林とは少し内容を変えてアップするようにしています。
どうぞ、今後もよろしくお願いいたします。

「有頂天家族」わたしも読みました!
毛玉たちが可愛かったですね♪
京都の風情は大好きなのです。あと、猫とか江戸とかも^^
また香桑さんのブログを参考にさせて頂きたいと思います。
こちらこそ、どうぞよろしくお願い致します。

もふもふの毛玉♪♪
susuさんのブログは時代とジャンルごとのカテゴリーわけがしてあって、そういう分類の仕方もいいなぁ、って思いました。
記事が増えるほど、分類の仕方に困ってしまいます。
また改めて、ほかの本についてもTBを送りますねー。

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