(短編)ホテルジューシー
坂木司 2006 『Sweet Blue Age』 角川書店
アルコールに依存するのではなく、ブラックアウトに依存する。
のんべんだらりと目前に横たわる時間、孤独、不安。
正気に戻ると、現実が待っている。
自分の意識、思考、記憶や理性、情緒、感覚、この苦痛から逃れられないとわかっていても、わかっているからこそ、意識ごと丸投げしたくなる。
逃げても逃げても、逃げようとしても、先送りしただけで、後述べしただけで、やっぱり、現実はそこにあるのに。
そんな空白を、意味や役割、関係、事物で埋めないと落ち着かない。
とんがって、頑張って、肩肘張って、しっかりものを務めてきた少女は、献身的な長女の役割をとりあげられたとき、困惑する。
主人公は、その空白を「だれかのために」で覆い隠すのではなく、「自分のために」居場所を見つける。
ダメな自分も丸ごと受け留めてくれたのは、沖縄の夏。
スイッチが入れ替わるように、いっぱいいっぱいで視野が狭くなった状態から、ふっと脱け出せる瞬間が、人生には何度かあるのだと思う。
ここを過ぎると、ぐっと楽になれるんだよね。
「出身地・性別など不詳の覆面作家」と紹介があり、どっちだ? 男か? 女か?と気になりながら読んだ。
どっちであろうと、物語には差支えがないってことで、この作者の他書も読んでみたい気がする。
わりとあっさりとした描写で、危なげがなく、かつ、嫌味がない文章だった。
***
続きを雑誌で読んだ。
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