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2006.12.31

木島日記

木島日記  大塚英志 2003 角川文庫

民俗学は偽史である、という、著者の大前提が興味深い。
開き直った感がないわけでもないが、言ってしまえば、表記された歴史というのは、実際の時間の流れと物事の連なりという事実としての歴史から遊離して、語られ始めたときから偽史としての側面を持たざるを得ないもののように思う。
そこを逆手にとって、史実の裏をかくように、また、表に絡みつくように、あたかも真実であるかのように物語る手法は、上手にしてやられるほど面白い。
だまされてこそ、一興。

京極夏彦『姑獲鳥の夏』に似た舞台設定で物語は始まる。
逃げ水が見えそうなうだる夏。だらだらの坂道、現実離れした古書店。
顔色の悪い芥川龍之介もどきの代わりに、主人公は坂姫と仮面の男に出会う。
その主人公は、折口信夫。

ナショナリズムを高揚させるために、国家や民族の正当性や優越性の由来の説明に用いられていく民俗学。
戦前の日本を描きつつ、オカルトに傾斜する雰囲気を如実に描き出した点で、小説でありながら現代の日本への批判がたっぷりと込められている。

p.225に、柳田國男の山人は「現日本人の末裔」とあったが、「原日本人の末裔」とか、「現」が「原」か「元」ぐらいじゃないと意味が通らない気が。
それとも、現日本人は山人の末裔、となるのかなあ?
民俗学といえば、面白く読んだのは赤松啓介ぐらいな私には、ちょっと真偽の程はわからない。
主語の重複とか、句読点の位置とか、多少、読みづらい。見直しが不十分?と思われる箇所があったものの、そのたどたどしさが、却って創作臭さを消しているように感じた。

ただし、p.79、緘黙症は現在も有効な疾患名であり、自閉症との混合はいただけない。これはまったく機序が異なる状態を指すからだ。
多分、「緘黙症」と記録には記載されているが現在の知見から推測すると自閉症(より今日的には発達障害)と思われる、ということなのだと思うが、ここも少し言葉たらずな印象。

京極夏彦や、陰陽師などを好んだ人には、この小説も向いているのではないか。ありえないもの、あってはならないものを好む人にお勧め。
私は、著者の視点が面白いので、この人の小説ではなく、専門書のほうを読んでみたいと思った。

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