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2006.11.25

笑いと忘却の書

笑いと忘却の書 ミラン・クンデラ 1992 集英社

登場人物の時間と著者の時間が重なって流れつつ、短編同士が相互に絡み合って、主題の変奏を表していく、複雑で独特で巧妙な構成を持つ小説としても素晴らしいものであったが、小説の、文章の、物語そのものが印象深かった。

歴史の中から人知れず消えて忘れ去られた人々、記憶から何十万もの人生を消し去って無垢なる世界に生きようとした人々。
チェコからフランスに亡命せざるをえなかった小説家の背負う歴史は、それだけで私には重苦しい意味を彼に与えているように感じる。

夫と引き裂かれたタミナは、何度も夫の記憶をたどり、なぞり、失うまいとする。
そのために他の男と寝て、それによって更に喪う夫の記憶。
すがりつくように記憶のかけらをかきあつめ、並べあげる。
森絵都『風に舞いあがるビニールシート』と重ね合わせて読むと、更に切なく、味わい深いだろう。

学生のとき、フランス語の講義では読めなかった「失われた手紙」のラストに軽く衝撃を受けた。
この短編が、私が今の仕事を選ぶきっかけだったのだが……。いわく、人は自分の話を聞いてくれる耳を求めて戦争をしている。

無垢で無慈悲な天使の笑い。その天使達にレイプされる女性達が、チェコの大地だったのだろうかと想像が膨らむ。
愛について、性について、死について、孤独について、復讐について、忘却について、静かに深く考えさせられる本だった。

付け加えて、書記狂についての指摘と予測も示唆に満ちており、感嘆した。以下は引用。

 ***

書記狂(本を書きたいというやむにやまれぬ欲望)は、社会の発展が次の三つの根本的条件を実現するとき、宿命的に疫病の規模のものになる。
(1) 全般的に物質生活の水準が高いこと。これによって人々は無益な活動に身を捧げられるようになる。
(2) 社会生活の原子化、したがって個々人の全般的な孤立化の度合いが高いこと。
(3) 国民の国内生活において社会的変化が徹底的に欠けていること。

全般的な孤立化現象が書記狂を産み出し、そして今度は全般化した書記狂が全般的な孤立化現象を強化し、深刻化するのである。かつて印刷術の発明のおかげで、人間たちは互いに理解し合えるようになった。ところが普遍的な書記狂の時代にあっては、本を書くという事実はそれとは反対の意味をもつことになるのであって、各人はそれぞれ、外界のどんな声も通さない鏡の壁のような、己れ自身の言葉によって取り巻かれるのである。

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