植物図鑑
私ってばかだ。
家に帰るのを待てずに、職場に読みかけの本を持ち込んだ。
合間に読んで、にまにまと顔がゆるんでアヤシイ人になった。そこまではいい。
253ページでやられた。ぼろっと涙が出たら、後は止まらない展開。仕事の合間にぐしょぐしょになってどうする! 有川さんの本を職場に持ち込んだのが間違いだった。
しかも、読み終える前に忙しくなり、後ろ髪をひかれながら業務に戻り、終業後、暗くなる駐車場の車の中で残りを読み終えるまで家路につけなかった。こうして書いてみると、子どもの頃と行動パターンが変わらない。
有川さんだからハッピーエンドを信じていてもよかったはずなのに寸暇を惜しんで読みたくなったのは、そこが物語の力だと思う。
携帯小説は読まないと心に難く決めて、第一話だけは短編集で読んでしまったものの、ここまで甘あまな小説とは思っておらず、見事に撃沈。
表紙を開くと、作中に出てくる植物のカラー写真。巻末には、作中に出てくる料理のレシピ。
各章毎に、章題に合わせた植物の写真もあしらってあり、植物図鑑らしさも漂っている。
でも、もちろん、ただの植物図鑑じゃない。
お待ちかねの長編の王道の恋愛小説に、我が身を重ねてみたり、我が身を忘れてみたり、もだもだ、もだもだ。
ああ、でも、なんで、誕生日のシーンでやられるかなー。ハッピーなはずのシーンで涙が出てくるなんて。
記念日をきちんと憶えている男性と出会った試しがないので、イツキの濃やかさにぐらんぐらんと揺さぶられた。有川さんの描く男性は、いつも本当に素敵。
躾のよいワンコ。噛まない、お行儀のよい、同居人。しかも、料理も上手。こんな素敵な落ちモノ、拾いもの注意と友人にどれだけ注意されたとしても拾わねば。
親密になる過程から空白の一年まで、主人公のさやかの気持ちに寄り添って、誰かを愛しく思うその気持ちを存分に味わった。
読み終えて、ぐったりと快い疲労感に浸っている。これを癒すためには、もう一回、最初から読んで……無限ループ突入決定。
私も名前を憶え間違えているものが一つあったことに気づいた。
小説中には、ネジバナと紹介されている植物であるが、母からは「モジズリ」の名を教えてもらっていた。
万葉集で「陸奥のしのぶもじすり誰ゆえに〜」という句を見るたびに思い出していたが、検索をかけてみたらモジズリのほうが別称だということを初めて知った。優雅な名称なのになぁ。
イタドリも、私はギシギシ、スカンポ、スイバといった名称のほうが馴染みがある。小学校の遠足で山登りしたとき、勝手に取って食べていたものだ。山際の住宅地に住んでいて、結構、野性児ライフを満喫していた。
イヌノフグリの名前の由来は私も知っていたが、これを見ると、山岸涼子『天人唐草』を思い出すところで、年齢がばれそうだ。
去年の春先は、一緒にタンポポやヨモギを摘んだり、掘ってきたノビルをくれるような友人がいた。
その人を思い出した。フィールドの面白みを思い出させてもらった。野歩きのよい先生だった。
あの量のノビルを掘るの、大変だったのかな。今更、もう少し喜べばよかったと思ったり。
細めのフキは皮をむいて炒め煮にして、タンポポはサラダにしたり、スープの実にしたり。
ヨモギは、生ハムでクリームチーズと一緒に巻いてみたり。ノビルは湯がいてごまドレッシングで。
この小説を、携帯でリアルタイムで読んでいたら、もっとレシピを参考にできたかもしれない。
ターゲットは植物じゃなくて野鳥だったけど、その友人もごついカメラを持ち歩く人だったので、余計に思い出して懐かしくなった。
なお、ピーマンは、千切りしてレンジで1分チンして、ポン酢が好きです。おかかは、ありでも、なしでもOKです。
でもって、大量のクレソンはゴマ和えがいち押し。鶏肉で肉団子を作って、ベトナム風のスープにするのも好き。
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